「春生、もうそろそろ起きてよ~今日大事な日だよ?」
「あと10分、いやあと5分…春眠暁を覚えず、って俺の為の言葉だよね…」
「まさか遠い未来こんな事に使われるとは唐の詩人も思わなかったろうね」
「そ、そんな怒らないでよ、起きるからさ…」
「ほら、太陽が気持ちいいよ?部屋も広いしのびのびストレッチとかしよ」
「確かに今日は暖かいね。日差しも明るいし…よいしょっと」
「私広い部屋を利用して大の字になれとは言ってないよ。ささ、歯磨くよ」
「前から思ってたんだけど、桜ってどうして歯磨きの時ずっと鏡見てるの?」
「洗面台立派だし使わない手はないじゃん?春生はなんでうろうろすんの」
「洗面スペース広いし使わない手はないじゃん?あ痛っ!!」
「犬も歩けば棒に当たる、春生も歩けば角に足の小指当てる…」
「引っ越して思うけど広いキッチン助かるなぁ…はい、今日は目玉焼き」
「やったね、ソースかけちゃおっと!これが旨いんだよなぁ」
「それ本当分からないなぁ…私は絶対醤油だと思うんだけど」
「ま、違うまま今日も寄り添って過ごそうよ。この2口コンロみたいにさ」
「…グリルもびっくりのアツアツジョークだね」
「よし、そんじゃそろそろ出かけ…あ、あのシャツあっちにしまってたか」
「そういえば私も今日は春物の上着きようかな」
「そろそろ衣替えしないとな、こっち冬物ばっかだ」
「だね。よし、あっち取りに行こっ」
「いやー広くて助かる!俺のシャツはこれで、はい桜の上着」
「ありがと。あ、見てこれ卒業アルバム!ここに置いてたねそう言えば」
「うお、懐っ。若いなー。俺たちが出会ったのもこんな暖かい日だったね」
「ね。あれから色んな事が変わったけど、楽しく過ごしていたいよね」
「まぁそれは大丈夫っしょ。この家がそれを思い出させてくれるよ」
「そうだね。それにもう一つ忘れたくないものがあるよ」
「ん、何?」
「春生、これからもよろしくね」
「…うん。よろしく、桜。それじゃ出しに行こうか、婚姻届け」
賃料9.7万円 敷金1ヶ月 礼金1ヶ月